【01】 権利能力

1-1 権利能力の意義

権利能力とは、私法上の権利義務の主体となる資格である。

すべての人間は、権利能力を認められる。
これを前提として、出生によって権利能力が与えられることを民法は規定した。
私権の享有は、出生に始まる(3条1項)。

民法上、出生とは、体が母体から全部露出した時点をいうとする全部露出説が通説である。

外国人については、特定の権利の享有が制限されることがある。
すなわち、外国人は、法令または条約の規定により禁止される場合を除き、私権を享有する(3条2項)。

1-2 胎児の権利能力

出生までは権利能力がないとすると、不都合が生じる場合がある。
そこで、民法は、①相続(886条)、②遺贈(965条)、③不法行為による損害賠償請求(721条)、の3つの場合にかぎり、胎児にも権利能力を認めている。

1 胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす(886条1項)。

2 胎児が受遺者となりうることについては、965条が886条を準用する。

3 胎児は、損害賠償の請求権については、既に生まれたものとみなす(721条)。

また、父が胎児を認知することも認められている(783条1項)。

しかし、母親が胎児の代理人となって損害賠償を請求することは認められていない(大判昭和7・10・6)。
胎児の時の不法行為に対しては、出生後に損害賠償を請求できるということになる。
この考え方を停止条件説という(判例・通説)。

停止条件説は、胎児が生きて生まれたことを停止条件として、胎児の時にさかのぼって権利能力を取得したことにするという考え方である。
ゆえに、胎児の時点では権利行使はできない。このように考えるのは、胎児の代理制度が現行法上認められていないことなどを理由とする。